偏愛と日常を届けるインタビューメディア「aboutalk」、今回は2019年冬にエッセイストとしてデビューする忍足みかんさんにお話を伺いました。
スマホに依存し、ながらスマホの常習犯だった忍足さん。スマホからガラケーに変えたきっかけや思いはどんなものだったのでしょうか。
–エッセイスト 忍足みかん
1994年生まれ、エッセイスト。会社員として働く傍ら、スマホ依存からの脱却を書いたエッセイ「スマホの奴隷をやめたくて」の出版準備中。
ツイッター…(@mikanoshidari)
手あたり次第でぶつかった出版への道
–エッセイの出版、おめでとうございます!!どんなご縁でエッセイを出版することになったんですか?
ありがとうございます。初めはエッセイ漫画を考えていたんです。西原理恵子さんの「毎日かあさん」のようなイメージです。
でも、エッセイは門が開かれていない印象があって。純文学だと「すばる文学賞」や「文藝賞」「新潮新人賞」など、公募型の賞があるんですけど。
エッセイ漫画ということもあり、手あたり次第に出版社に持ち込みましたね。ほら、漫画って編集部に持ち込むイメージありませんか?
昨年の9月頃、「編集部×持ち込み」などと調べて、集英社や講談社など25社に原稿を送ったんですよ。
エッセイ漫画からエッセイに
その中で、今回ご縁があった出版社から連絡がきたんですけど。
「ちょっと絵がねぇ、もう少し丁寧に描けたらいいんだけど。他に何か書いたりしてないの?」と言われてしまいまして。
エブリスタというウェブサイトで小説を書いていたので、それをお伝えしたところ。
「文章が書けるならこっちがいいんじゃない?漫画よりもエッセイでいこう」
と話が決まったんですよ。
小さなころから書くことが得意
–ウェブサイトで小説を公開されていたんですね。書くことは昔からの活動ですか?
小学生のころから書くことが好きでした。作文コンクールを狙って、たくさん応募してきましたね。
新聞に載るのも楽しみでしたし、詩を書いたりすることも好きでした。
中学生、高校生時代は、文芸部に所属していましたよ。
三題噺(*)の作文とかよくやりましたね。短い文章で仕上げてもいいので、原稿用紙10枚くらいで書き上げたりとか。
(*)三題噺…落語の形態の一つ。観客に適当な言葉や題目を3つ出させて、それらを折り込んだ話を即興で演じる。
大学生のころも、文芸研究同好会で活動していました。
SNSやゲーム、スマホ依存症だったわたし
–今回の出版は「スマホの奴隷をやめたくて」というタイトルと伺っていますが、スマートフォンとはどんな付き合い方をされていたのでしょうか。
簡単に言えば「ヤバい付き合い」でした。
夢中になりすぎましたね。
ツイッターやインスタグラム、Facebookに没頭していましたよ。
気付いたらスマホの画面を見てしまっているんですよね。
エスカレーターに乗っている間や、電車が1区間移動するような短い時間でもスマホを操作してしまっていました。
他にもゲームもやっていましたよ。そのゲームは「ハート」が無くなるとプレイできないんです。20分で回復するので、画面を開いてカウントダウンしてました。あと10秒、5秒、って。
そのくらいスマホには依存していたんです。
スマホと引き換えに失いかけたもの、視力・命
手から離すことができないくらい依存していたんですけど、それを更生してくれるきっかけがあったんです。
それが「視力」「命」「友人」でした。
視力の著しい低下
4月の健康診断で【A判定】だった視力が、10月の自動車運転免許取得時に裸眼で判定ギリギリまで低下してしまったんです。これはヤバい、今見ている画面は、身体と引き換えにして見なきゃいけないものでしょうか。
「いいね」が1つ増えただけで、鼻が高くなったり、目がぱっちりするようなことはありません。何と引き換えに目を酷使しているのだろうか、と。
今は、ガラホ(ガラケー)に変えたので、目を大切にしようと心がけています。目によい沖ヨガを日課にしていて、意識的に遠くを見たり、目によい漢方を飲んだりクコの実食べたり。おかげ様で今はA判定を維持していますよ!
交通事故に遭いそうになる
もう一つは、車に轢かれそうになったんです。大学卒業間近なころ、みんなでディナーをした後に帰路についていたんですが。帰り道に十字路があるんですが、そこで事故に遭いかけて。
ながらスマホをしている自動車と、ながらスマホをしている自転車と、ながらスマホをしている歩行者の私。
間一髪で、誰もケガをせずに済んだんですが、一歩間違えれば大事故でした。
どうしてもスマホが気になってしまいますが、目の前に「死」がぶらさがっていると、ちょっと距離をおこうかな、なんて思ってしまうんですよね。
友人との別れ
最後は人間関係です。
スマホと距離を取り始めて、デジタルデトックスをしていたんです。
数日ぶりにツイッターをしていたら、一番仲の良かった友達がフォロワーからいなくなっていて。
操作ミスかもしれない、ということでLINEで連絡をとってみたんです。そうしたら
「みかんちゃんが”いいね”してくれないから、もうお友達でいなくていいよ、バイバイ」って。
SNSって虚しいですよね。会ったこともある友達なのに、簡単に離れて行ってしまう。
そんなことがあったので、スマホはもういらないや、止めにしよう。って思うようになったんです。
スマホじゃない選択肢もあるということ
だからといって、「スマホを絶対許さない!」「スマホ撲滅!」「スマホを駆逐してやる」ということは思っていません。
みんな違っていいじゃないですか。多様性を認められるようになってほしいですね。
女子高生がガラケーを使っていてもいいし、90歳がスマホでもいい。押し付けないで、好きなものを使えばいいと思っています。
私がスマホからガラケー(ガラホ)に変えようとしたときも
「スマホと料金も変わりませんし、スマホにしましょう。
と、強引に勧められました。私はガラケー(ガラホ)が欲しかったんです。
いろんな選択肢があってもいいのかなと思っています。
スマホから機能を分離させる
–スマホからガラホにしたことで、困ったことは無かったですか?
ガラホはLINEができるので、そんなに困ることはありませんでしたが、唯一地図アプリを使うときだけは、スマホを持っていればよかったな、と思います。
スマホに入っている機能を順番に分離させていくと、そんなに困らないんですよ。
カメラ機能はデジカメに任せてみたり、電子ブックも紙の本にしたり。ある程度は別のものが役割を担ってくれるので。
私の思いを届けたい、スマホとの葛藤
ただエッセイ漫画やエッセイを出版したいわけじゃなくて、スマホとの葛藤をみんなに届けたいんですよ。
周りがスマホ、スマホって言っているけど、スマホにする必要がない人だっているよね。依存症になってしまう前に、違う選択肢だってあるんだよ。
ということを、声を大にして伝えたかったんです。だから、何でもいいから書きたい」ではなくて、「スマホの奴隷をやめよう」ということをとにかく伝えたいんですよ。
順調にいけば、2019年11月下旬に店頭に並びます。
スマホに自分の大切なものを奪われてるな。そう感じることがあるなら、一度手に取って頂ければと思っています。
インタビューを終えて
平日の夕方、お仕事終わりに、忍足さんオススメのカフェで話を聞かせて頂きました。
出版に至るまでの前向きなパワーと、本を1冊書ききるパワー、そんなエネルギーが溢れる忍足さん。時間があっという間に過ぎてしまうほど面白い方で、楽しい取材でした。
冬に初エッセイが店頭に並ぶとのこと。最後に「エッセイが発売されたら、もう一度インタビューさせてください」とお願いし、取材を終えました。またお目にかかれる日が楽しみです!
忍足みかん
ツイッター…(@mikanoshidari)
写真提供…忍足みかんさん
取材協力…LOOKME(https://lp.lookme.me/)
取材・写真・文…スズキヒデノリ(@acogale)