偏愛と日常を届けるインタビューメディア「aboutalk」、今回はプロ無職の るってぃさんに話を伺いました。渋谷で個展をされていた るってぃさん、プロ無職が絵を描いてみようと思ったきっかけは?
–プロ無職 るってぃ
1991年、石川県金沢市生まれ、プロ無職という肩書きで「多様な働き方と理想のライフスタイルの提供」をテーマに情報発信している。
ツイッター…(@rutty07z)
どちらかといえば嫌いだった
–ダンスにブログにスター・ウォーズという印象が強かったんですが、絵は昔から好きだったんですか?
絵を描くことなんて、全く予想していなかったです。どちらかといえば嫌いでした。でもそれは”食わず嫌い”だったんです。
絵の具って手が汚れるから嫌だとか、美術の時間も好きじゃなかった。でも、とりあえず やってみたらどうだろう。
今でも筆を洗ったり面倒なこともありますけど、「まあ絵もなかなか良いかな」なんて思うようになりました。好き嫌いじゃなく、やってみるっていうのが結局一番ですね。
色んなチャレンジをしている人が近くにいる
絵に興味をもったのも、宮森はやとさんの影響なんです。宮森さんを通して「オレ、抽象画が好きなんだな」なんて思うことができて。
抽象画って、全くわけがわからないんですよ。その一方で、ありがちな感想なんですが、「オレでも描けるじゃん」って思ってしまったんです。
1年前までの自分は、「絵って何が面白いの?」 そんな印象しかありませんでした。でも、抽象画をきっかけに絵の世界を覗くと、面白そうなことがいっぱいだったんです。
歴史と結びつける学び
例えば、歴史と結びつけると面白いものが見えてきたんですよ。
19世紀にカメラが大衆に普及すると、それまでの絵は意味の無いものになってしまった。デッサンで本物そっくりそのまま描けることが価値だった絵。カメラが登場すると、デッサンはカメラに置き換わってしまう。
そうやって価値をどんどん入れ替えてきたんですよね。でもそれが、画家の歴史のターニングポイントになった。その時代にはピカソ、モネ、マティスなどの有名な画家が登場します。
また、同じ時代にチューブ入りの絵の具が登場したんです。自宅で顔料を混ぜて絵を描くスタイルから、絵の具を持ち歩けるようになった。画家も旅ができるようになったんですよ。
絵を描くことが自分の内面を引き出してくれる
–絵を描くことで自己理解ができると言っていたことを思い出した。その話を少し聞いてみることに。
自分が描いた絵を並べてみて、気付いてしまったんです。青色が多いでしょ、どうやら青が好きらしいんですよ。服とかは青色をそんなに着ないのに、絵になると青をめっちゃ使う。
絵を通した自己理解ですよね。自分はこんな色が好きだったんだ、って。
絵は自宅で描くので旅に行けない。オレの描く絵は持ち歩いてまで描くものでもないんですよね。だから今年の夏はずっと東京。展示会もあって、尚更どこにも行けない。
そんなときの自分のバランスがどこにあるのか。
絵を描くときも、一気に仕上げることもあれば、5作品くらいを平行して描くこともある。わざと2週間ほど放置してみたり、あの作品を無視してみたり。
そういう自分との対話が絵にはあるんですよ。
絵は信用できて、絵はピュアだ
–絵を見たときには何を感じているのだろう
目に見えるものだけを見ない、その裏側を見ること。そこに真実があるんです。
文章と違って、絵は広がりを感じる。その広がりが自由すぎる。色だけを見たとしても、「どんだけ色があるんだよ」なんて思ってしまう。
でも、その自由さが、信用できるんです。文章よりも、その人が表れている。嘘じゃないんだな、と感じることができるんです。
日本語って、例えば敬語とか、たまに面倒くさいときがありません? そう思うと絵はピュアなんですよ。純粋に絵なんです。
絵を前に、知人や友人と話すことがあると、絵がオレと相手を繋いでくれるんですよ。三者間で話すような楽しさがある。絵を通すことで、相手の違った面を見ることもできる。そんな面白さがありますよ。
伝わらないものを伝える楽しさ
–ブログのような”テキスト”ではなく、絵に秘められた面白さについて伺った
絵を描くのって決して楽じゃないんです。苦しいときのほうが多い。「早く終われ」「ツラい」って。いつも追われてます。でも、その苦しみのちょっと先にいいものがあるんだと信じてます。
最近、ポエトリー(詩)で言いたいこともないんですよね。でも、フランスで日本語が通じない人たちに、日本語で伝えようと思うと言葉が出てくる。
「伝わらないものを伝える」楽しさがあると気付きました。そこに快感もある。
日本人に日本語で伝える。外国人に英語やフランス語で伝える。
というのは違うんです。そうじゃない。
外国人に日本語で、日本人には抽象画で伝えたい。伝わらないことを伝えていきたい。まさにその気持ちでいっぱいです。
でも、伝わってほしいという気持ち半分、伝わってたまるかという気持ち半分。こういう苦しみを感じる人生を送っていくんだな、なんて思ったりします。
インターネットで生きてきたから、インターネットじゃ伝えきれない
絵のリアルな凸凹、質感にこだわっている自分に気付いたとき、なんで質感にこだわるのだろう、と思ったことがあって。これはインターネットの世界では表せない質感や温もりを届けたいんだ、と気付いたんです。
それはオレ自身がインターネットの世界で生きてきたからかもしれません。インターネットをやってきたからこそ、インターネットじゃ表せない質感をリアルに伝えたいんですよね。
個展に来てくれた友人も「質感がスゴいね」「生で見られてよかった」と言ってくれました。確実にインターネットの世界では伝えきれないことがあるんです。
インターネットがきっかけで知り合った人、出会った仲間がリアルな場所に来てくれる。そこに生まれるコミュニケーションに、アートを感じるんです。
友人がやっていたから、軽い気持ちで始めた絵、いつの間にかハマってしまいました。文章のように簡単に伝わらない”絵”から、オレは何を伝えることができるのか。
これからも展示会や個展を開催するので、是非リアルな質感を生で感じてみて下さい。
インタビューを終えて
今回は、東京・渋谷にあるBOOK LAB TOKYOで個展をされていたところにお邪魔して話を伺いました。
ブログで文章を書いているイメージしかなかったので、どんな気持ちで絵を描き始めたのだろう、と不思議に思っていたんです。
実際に生で作品を見て、リアルな凸凹やグラデーションを感じてしまった。それをキッカケに絵の楽しさ、奥深さを知ることができました。
また、歴史や文化と紐付くことで、画家や絵の捉え方も変わってくるような、そんな気付きを教えて頂きました。
ちなみに、2019年10月19~20日はカルチャーメディア「CINRA.NET」が主催するイベント「NEWTOWN 2019」にて、るってぃの作品が展示されるとか。お時間のある方は是非、生のリアルな絵をご覧になってはいかがでしょうか。
お忙しい中、貴重なお話、ありがとうございました。
プロ無職 るってぃ
ツイッター…(@rutty07z)
取材・文・撮影…スズキヒデノリ(@acogale)
[aboutalk編集部]